TRON HOUSE
TRON電脳住宅


東京六本木に1990年建設されたTRONハウスは、18社で構成されたTRON電脳住宅研究会によって建設されたもので、一連のTRONプロジェクトの一環として東大助教授坂村健によって設計指導が行われた。

TRONプロジェクトは、これからのコンピュータ社会の理想を求め、ひるがえって今何を始めるかを考え進めているプロジェクトである。

バラバラな機器や中途半端なホームオートメーションの寄せ集めてなく、さまざまな機能を統合して、きめ細かく調整し、しかもだれもが使いこなせるシステムが必要である。TRON住宅ではインテリジェントハウスの真の可能性が追求された。

こうしてTRONハウスでは、複雑な機能を単純な操作によって使いこなせるよう、すべての設備機器を有機的に接続し、統一的な制御ができるようなシステムが作り上げられた。これは大変難しい作業であった。

これには二つの狙いがあった。ひとつ目は、設備相互の協調動作を可能にすることである。協調動作によってより快適で経済的な制御が可能となる。

二つ目は使い勝手をよくすることである。操作性を統一することによって、設備の種類が違っても、同じ様な手順で操作できるようになる。


情報設備


多様なプログラムのテレビ

一般放送、衛生放送、CATVなどのテレビプログラムだけでなく、地下室の放送設備からのレーザービジョンを映し出すこともできる。

さらにモニターとして玄関のTVカメラ、地下収納庫のコンテナの記録画像、各室の温度、湿度や照明やエアコンの作動状況などの表示ができる。


電話システム

トイレにはハンズフリーの電話、浴室にはコードレスの電話を装備。また電話はセンターコンピュータを介して各種機器のコントロールができる。


操作の統一

機器の操作は「スイッチ」、「電脳リモコン」、「BTORONコンピュータ」の3つによって行われる。スイッチには統一されたピクトグラムが付けられており、どのスイッチかが分かりやすくなっている。電脳リモコンは赤外線方式となっており広い室内での機器の操作に使われる。


音響設備


豊かな音響空間

浴室、トイレを含む住宅全体に数十個のスピーカーが組み込まれ、放送やCDなどからの音楽を流すことができる。またリビング、寝室ではデジタル信号処理により教会やジャズクラブの雰囲気を楽しむことができる。


キッチン設備


おいしい料理を作るためのキッチン

コンピュータによる料理検索、コンピュータ制御調理システム、コンピュータ制御ビデオによるクッキングガイド。


移動式のパーティーワゴン

リビングには、水、湯、冷水、冷蔵庫、電気レンジを備えたパーティーワゴンを置いている。


衛生設備


衛生的なトイレ

機器にまったく手を触れず衛生的に使用できる非接触トイレ。


豊かなバスライフ

風呂の中でテレビや音楽を楽しむことができ、電話をすることもできる。機器のコントロールは電脳リモコンや外部の電話からも可能になっている。


空調設備


自然の風とエアコン

住宅の窓は電動で開閉することができる。屋外にある気象センサーで温度、湿度、気圧、風速、風向、雨、照度を常時測定し、現在の風が気持ちよいかどうかを判断し、取り込んだ方がよい場合は、どの窓から取り込むべきかを判断し、その窓の開閉操作を行う。

外部の気象条件が悪い場合は、窓が自動的に閉まりエアコンが作動する。また雨の場合も窓は自動的に閉められる。


天井冷房・床暖房

天井に放射パネルを設置し冷風でなく放射による冷房を行っている。暖房は床暖房による放射暖房となっている。2階は天井からのファンによる冷暖房であるが、風の速度はコンピュータによって制御され、ときどきフッと強い風が流されたりする。


照明設備


照明によるシーンの演出

だんらん、食事、パーティーなど多様な生活シーンに合わせて、雰囲気作りを照明が演出する。スイッチには生活シーンに合わせたシーンスイッチが用意されており、それぞれのスッチに合わせて照明がコンピュータコントロールされる。


おでかけ

全員が出かけるとき、「おでかけ」というシーンスイッチを押すと、外が薄暗くなってくると玄関やポーチの照明が自動的に点灯する。帰ってきて鍵を開けると自動的に必要な照明が付けられたり、エアコンが自動的に運転されたりする。


夜中のトイレ

夜中にトイレに起きたとき、廊下からトイレまでの照明が人体感知器と連動し自動的に点灯される。


お化粧のための洗面台

でかける場所によって照明の種類が異なるので、出かける場所に合わせての照明調節を行い、行き先に合わせた効果的な化粧ができるようにする。


収納設備


収納のスペースセービング

常時使わないものは、地下収納庫のコンテナに納められる。このコンテナは電動式でボタンひとつで簡単に取り出すことができる。また電子スチルカメラを使いコンテナの中が記録されるので、必要なものがどこにしまわれているか、テレビを見ながらさがすことができる。


植栽管理設備


植物の自動潅水

半屋外空間の樹木や観葉植物は、ロックウールやハイドロカルチャー方式の水耕栽培で育てられる。水などの管理はコンピュータによって行われるので、旅行など長期の不在でも安心である。


サッシュ・ガラス・屋根


住まいの皮膚

サッシュ・ガラス・屋根は住まいの皮膚にあたるものとして、人間の皮膚が外気の状況や体調に応じて反応するように、知能を持った皮膚をめざしている。外部に面したサッシュはすべて空調設備と連動して自動的に開閉するようになっている。


エントランス側外観

1階平面図

2階平面図


Last modified: Sat May 4 17:40:00 JST 1996
(c) Dr.Shigeaki Iwashita

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